犬神家の一族 (2006)
■犬神家の一族 2006年・日
■監督 市川崑
■製作 黒井和男
■原作 横溝正史
■脚本 市川崑、日高真也、長田紀夫
■音楽 大野雄二
■キャスト
石坂浩二 (金田一耕助)
【犬神家のみなさま】
仲代達矢 (犬神佐兵衛)
富司純子 (犬神松子→佐兵衛の長女)
松坂慶子 (犬神竹子→佐兵衛の次女)
萬田久子 (犬神梅子→佐兵衛の三女)
尾上菊之助 (犬神佐清→松子の息子/青沼静馬)
葛山信吾 (犬神佐武→竹子の息子)
奥菜恵 (犬神小夜子→竹子の娘)
池内万作 (犬神佐智→梅子の息子)
岸部一徳 (犬神寅之助→竹子の夫)
螢雪次朗 (犬神幸吉→梅子の夫)
松嶋菜々子 (野々宮珠世→佐兵衛の恩師の孫娘)
永澤俊矢 (猿蔵)
【那須町のみなさま】
三谷幸喜 (那須ホテルの主人)
深田恭子 (那須ホテルの女中はる)
林家木久蔵 (旅館柏屋の主人)
中村玉緒 (旅館柏屋の女房)
中村敦夫 (古館恭三弁護士)
嶋田豪 (古館弁護士事務員・若林久男)
加藤武 (等々力警察署長)
尾藤イサオ (仙波刑事)
石倉三郎 (藤崎鑑識課員)
大滝秀治 (大山神官)
草笛光子 (琴の師匠)
三條美紀 (お園→松子の母)
松本美奈子 (青沼菊乃→静馬の母)
<あらすじ>
莫大な資産を遺して亡くなった犬神佐兵衛の遺言書には、彼の恩師の孫娘・野々宮珠世と結婚した者(佐清・佐武・佐智のいずれか)に相続すると記されていた。
佐兵衛の三人の孫たちは珠世を自分のものにすべく色々策を企てるが、そうしている内、次々と殺人事件が起こり始める。
角川映画第1作目のオリジナル版の『犬神家の一族』から30年。
あのミステリをまた観られると思ったら、もう楽しみでしかたがありませんでした。
今回、ラッキーな事に試写会が当選して、早速観に行って来ましたっ!
市川崑監督がリメイクの企画を聞いた時に「最初はね、"全キャスト前と同じで"…って言ったんです。半分本音で、半分は冗談。」と仰ったそうです。
判ります、判ります。
オリジナル版のキャストは完璧だったと、わたくしも思います。
さて、今回はどのようなキャストがどのように演じてくれるのか、どこがどう変化していて、どこがオリジナルと同じなのか、確かめて来ようと思います!
<ここからネタバレです!>
わたくし、横溝正史のファンですし、金田一耕助のファンですので、『犬神家の一族』のリメイクは大賛成!
まず、オープニングの音楽…
そう、この曲!
メロディーが流れただけで、あの陰湿でドロドロした犬神家の忌まわしさを思い起こさせてくれるではないですか!
オリジナルの曲とリメイクの曲。
う~ん、全く同じに聴こえましたが、同じなのか、少しアレンジしてあるのかは判りませんでした。
聞き比べてみないとちょっと難しいですね。
そして、スクリーンに映し出されるスタッフ・キャストの名前が、これまたお約束通り。
スクリーンの20%は占めようかと思われるほどのデカイ明朝体の字で、配置も独特なんですよね~
例えば…
監
督市川
崑
(↑ちゃんと表示されてる?)
こんな風に、文字が横書きになったり縦書きになったりするんですよ。
わ~懐かしい~金田一ワ~ルド♪
舞台は信州那須市。
金田一耕助は、古館恭三弁護士事務所の事務員・若林に呼ばれ、この那須市にやって来ます。
ここから早速殺人事件勃発!
この展開の速さもまた良いですね。
若林は金田一に一度も会う事なく死亡してしまう訳でして。
そこに登場は、出たっっ!
加藤武演じる等々力署長~
懐かしいー
わたくし、この加藤武の存在が大好きでして。
オリジナル版での彼は、とことん金田一に敵対、または無視…と「感じ悪い~」の極みでしたが、今回は結構、金田一の意見に耳を傾け話を聞き、また一緒に行動してます。
そして、彼の口癖『よし!判った!』
これは劇中、なんと3回も披露してくれました!
ありがとうございます。
さて、事件は、犬神家の三種の家宝「斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)」になぞられて殺人が起こります。
まずは、オリジナル版での衝撃が今もなお忘れられない、菊人形生首の佐武氏、琴糸で絞殺後、天窓から覗く佐智氏、ラストは、湖から両足コンニチハの佐清氏(後に、佐清だと思われていた遺体は静馬だと判明)。
これはリメイク版でも健在…
嬉しい限りです。
とにかくオリジナルとリメイク、内容や展開など、ほとんど同じ印象。
キャストが変更になっただけ…と言えばそうなんですが、この金田一ワールド好きにはたまらないリメイクとなった事だけはハッキリ言えます。
今まで褒めちぎって参りましたが、ちょいとキャストについて一言。
まずは犬神松子役の富司純子!
富司純子は、「犬神松子」とはどういう人物かを研究し、自分の「松子」を生き生きと演じていたと思います。
もしもこの「2006年版の犬神家の一族」がリメイク版ではなくオリジナル版だったら、富司純子の松子は後世に語られるほどの素晴らしいキャラクターになったでしょう。
あのキレ加減は最高でした。
しかし、オリジナル版の松子は、高峰三枝子。
あまりに高峰三枝子の印象が強すぎて…
高峰三枝子の松子は完璧!
陰気な美しさと奥底から滲み出る怪奇なオーラ。
彼女がそこに正座しているだけで、まるでその周辺に邪悪な淀みを感じるような闇。
それらは、残念ながら富司純子には、ない。
次に野々宮珠世役の松嶋奈々子について!
わたくし、松嶋奈々子は嫌いではありませんので、珠世役には期待しておりました。
この年頃の女優の中では、芸能界を代表するような貫禄さえある松嶋奈々子。
しかし、残念ながら、「犬神家の事件の鍵を握る絶世の美女」ではなかった…
リメイク版の『犬神家の一族』のポスターをご覧になりましたか?
松嶋奈々子さん、とても美しく写っていたと思います。
一瞬の美しさ勝負の写真では絶世の美女ぶりを発揮できそうですが、その美しさを保ったまま演技をする事が難しい。
ですので、スクリーンの中では、時に美しく見える瞬間もあるのですが、全体的に凡人風。
オリジナル版の珠世は、島田陽子。
島田陽子をモデルにして珠世を作り上げたのか?と思わせるほどイメージがピッタリです。
育ちのよさを感じさせる品格、控えめでありながら意志を通す強さ、そして、少しホラー気味の顔。(←これポイント)
他を寄せ付けないオーラを放っているんですよね~
それらは、残念ながら松嶋奈々子には、ない。
(だって癒し系で売ってるんだもんね、ホラー気味…は無理だよ)
全体的に昔の俳優よりも、現代の俳優の方が、線が細い印象がありますね。
まあ、勝手気ままに書いてしまいましたが、金田一ファンの方でしたら、是非リメイク版もご覧下さい。
両方見て色々考えるのが楽しいと思います。
・・・余談ですが。
「佐清」と書いて、「すけきよ」
「佐武」と書いて、「すけたけ」
「佐智」と書いて、「すけとも」
では、犬神財閥の長「佐兵衛」は、何と読む?
この法則でいったら、スケベエ~ですね。(^^)
★オリジナル版 『犬神家の一族』(1976)のレビューは、こちら