ラングーンを越えて 「BEYOND RANGOON」
■ラングーンを越えて 「BEYOND RANGOON」 1995年・英/米
■監督 ジョン・ブアマン
■製作 バリー・スパイキングス、エリック・プレスコウ、ジョン・ブアマン
■脚本 アレックス・ラスカー、ビル・ルーベンスタイン
■音楽 ハンス・ジマー
■キャスト
パトリシア・アークエット (ローラ→医師)
ウー・アウン・コー (アウン・コー→元教授&ガイド)
フランシス・マクドーマンド (アンディ→ローラの姉)
スポルディング・グレイ (ジェレミー・ワット→ツアーガイド)
アデール・ラッツ (アウン・サン・スー・チー)
<あらすじ>
1988年8月、ローラは、強盗に夫と息子を殺害され暗い日々を送っていた。
心配したローラの姉アンディは、ローラを誘いビルマ(現在ミャンマー)に旅行するが、そこでローラはパスポートを紛失してしまいそのままビルマに滞在、アンディだけタイに移動する事になる。
パスポートはすぐに再発行出来たが、ローラはアンディの居るタイへは向かわずに、潜りのガイドに、ラングーン郊外へ向かうよう依頼する。
これは、本当に本当に素晴らしい映画です!
カンヌ映画祭出品作品で、多くの方に支持されたにもかかわらず、日本では劇場未公開なんですよね。
政治的背景が絡んでいるのか、ただ単に日本の配給会社が選ばなかっただけなのかは不明。
ミャンマーでは、軍事的圧力が今なお続いているはずなのに、テレビではそんな残虐なシーンは放送されません。
わたくしたちが、映画やお笑いを観て楽しく笑っているその瞬間にも、銃を向けられ恐れている国民がいるかもしれないと言う事を忘れてはならないのです。
監督は『脱出』(1972)、『戦場の小さな天使たち』(1987)のジョン・ブアマン。
彼は今作品で、1995年のカンヌ映画祭パルム・ドールにノミネートされています。
主演は『トゥルー・ロマンス』(1993)のパトリシア・アークエット。
その他、アンディ役に『ファーゴ』(1996)のフランシス・マクドーマンド、ツアーガイドに『悪魔のような女』(1996)のスポルディング・グレイ。
また、元教授で現地のガイドをしていたウー・アウン・コーは、映画の中でもアウン・コー役(本人の役)で出演しています。
彼は、実際にビルマから亡命した経験者でもあります。
<ネタ話突入です~>
何度も言っちゃいますが、本当に素晴らしい作品です。
でも知名度があまり高くないのが残念な所。
是非、機会があったら観て頂きたい作品の1つだと思います。
ローラは、幸せな日々から一転、家族を強盗に殺害され暗い日々を送っています。
彼女の事を心配した姉は、気分転換の為に旅行へ誘うのですが…
なんで旅行先がビルマなのかな~
とにかく、夜間の外出は禁止、滞在は7日間以内…など制約が多いんです。
もっと楽しくて開放的な観光地に行けば良いのにね。
心を閉ざしたままのローラは、紛失したパスポートを再発行してもらい、姉の待つタイへ出国できる状況になっても、まだビルマに留まろうとしている感じです。
安全とはいえない環境へ自ら立ち入ろうとするローラ。
命を落とすような事が起こっても、それはそれで構わないと思っているのでしょうか。
しかし、潜りのガイドに連れられ小さな村へ滞在した時、民主化への熱い思いを胸に秘めている若者たちと交流し、彼女の中でなにかが動き出したようです。
時に自暴自棄になったとしても、彼女のように、ある何かによって心を突き動かされる瞬間に出会えたのはラッキーだったと言えるでしょう。
兵から逃げ、森の中を彷徨い、やっと川岸へ。
この川を渡ればタイ。
向こうへ行ければ自由の国。
タイの川岸には、医師団が派遣され、多くの亡命者の為、治療にあたっています。
無事に川を渡り終えたローラは、「私はドクターです」と治療の手伝いに加わり、女医の「どのくらい居られるの?」の問いに「いつまでも」と答えるその姿には、最初の泣いてばかりいた弱々しいローラの姿はありません。
そして、何より素晴らしいのは、ウー・アウン・コー氏が自らの役でこの映画に出演していると言う事。
彼の実体験が活かされている訳です。
アウン・サン・スー・チー役は、アデール・ラッツと言う女優さんが演じていますが、アデール・ラッツの後ろに掲げられていた写真は、アウン・サン・スー・チー本人の写真でした。
~ビルマについて~
ビルマ(現在ミャンマー)は、民主化運動を弾圧し、その後も独裁軍事政権が続いています。
1990年の総選挙では民主派が圧倒的に勝利したにもかかわらず、強力な武力行使により民主化への動きを封じている状況です。
アウン・サン・スー・チー女史は、1991年にノーベル平和賞を受賞。
しかし、2006年現在、自宅軟禁状態が今なお続いています。
一日も早く、争いや流血のない平穏が訪れますように。